組手競技
空手競技はスポーツである。従って、最も危険とされる技は禁止されており、技はすべてコントロールされたものである必要がある。特に頭部、顔面、頚部、股間、関節への攻撃は負傷しやすい。そのため、相手を負傷させた技に関しては、故意であるなしに係わらず、罰則が与えられる。競技者には、常にコントロールされたよい姿勢で技を出すことが求められており、スポーツマンシップにのっとった行動が望まれている。
競技時間/競技のすすめかた/得点/投げ技/禁止行為/10セカンドルール/勝敗判定基準/棄権/負傷/異義申し立て/競技者の服装/用具など
競技時間
- 階級別競技時間
- 成人男子:3分
- 女子:2分
- ジュニア(18-20才):2分
- カデット(16-17才):2分
- 成人男子:3分
- 競技の時間計時は主審が開始の合図をしたときから開始する。
- 主審の「やめ」の声がかかる度に計時を中断する。
- 時間記録係は「終了30秒前」と「終了」の合図をする。
競技のすすめかた
競技開始の際、主審はまず競技者に所定の位置につくよう指示する。その前に競技場には入らない。主審によって身ぶりで場外へ出るように指示されたら場外にでなければならない。競技者はお互いに正確に立礼しなければならない。競技者は、主審の位置からみて右手に位置する者が赤、左手が青と呼ばれる。
競技者の立礼の後、全ての審判が所定の位置についていることが確認されると、主審の「勝負始め」の声と同時に競技は開始される。
主審により「やめ」の声をかけられたら競技者は競技をただちに中断しなければならない。必要に応じて、競技者は元の位置につくように主審に指示される場合があるが、これに従う。
一方の競技者が相手に対して8ポイントの差を取得した場合、あるいは競技時間が終了した時点で主審は「やめ」の声をかけ、競技者には元の位置に戻るように命じるので、競技者はこれに従う。そして判定がなされ勝敗が決するか、延長戦になるかの判断が下される。
勝敗の宣告により、競技終了となる。
競技中は、すべての技、懲罰などの途中経過と試合の判定結果を記録する。(記録の方法についてはこちら)
得点
- 得点の呼称
- 一本:3ポイント
- 技有り:2ポイント
- 有効:1ポイント
- 一本が適応される範囲:
- 上段蹴り
- マットへの投げ又は足払いで倒した後の有効技
- 技有りが適応される範囲:
- 中段蹴り
- 背部への突き
- それぞれの技が得点に値する複合の手技
- 相手を崩し得点した場合
- 有効が適応される範囲:
- 中段突き
- 上段突き
- 打ち
- 攻撃部位の名称と対応
- 上段:
- 頭部
- 顔面
- 頚部
- 上段:
- 中段:
- 腹部
- 胸部
- 背部
- 脇腹
- 中段:
- 背面:
- 背部
- 後頭部
- 頚部
- 背面:
組手競技得点基準
得点を判断するポイントは以下の通り:
- 良い姿勢
- 背筋を伸ばし、相手に対しまっすぐ体を向けた状態で攻撃が行われていること。
- スポーツマンらしい態度
- 悪意のない態度で、有効技をかけている間に見られる際だった集中力を示すものである。
- 気力
- 技の力とスピードのことで、それを達成しようとする全くひるみのない、確固たる意志の表現が必要である。
- 残心
- 相手の反撃の可能性をみる継続的な集中力である。技をかけた後、顔を背けることなく相手に正面を向けていなければならない。
- 適切なタイミング
- 最も有効な瞬間に技をかけることである。
- 正確な距離
- 有効な距離で技をかけることである。肌に触れる(スキンタッチ)か顔面から2〜5cmの所への突き、蹴りが正確な距離と判断される。
- 競技者の双方が同時に決めた技は得点とはならない。
- 競技終了と同時に決まった技は得点の対象となる。
- 主審の「やめ」の宣告以後の攻撃は効果的であっても得点にはならない。但し違反に対しての懲罰の対象になる。
- 競技者の双方が場外にいた場合に決まった技は得点の対象にはならない。
- 競技者の一方が場内におり、主審が「やめ」を宣告する前に決まった技は得点の対象である。
- 喉への攻撃は認められるが、触れてはいけない。適切にコントロールされていれば得点となる。
- 肩甲骨への攻撃は得点となる。
- 上腕と肩甲骨及び、鎖骨との結合部は得点外である。
- 帯から下への攻撃は、恥骨より上である場合のみ得点の対象となる。
- 有効な攻撃の後、体勢が崩れたら技はとらない。
- 技術的に他の基準を満たす場合には、攻撃部位への適切な距離以内の上段突き、又は相手が受けもせず避けようとも上段突きは得点になる。
- カデット以下に対しては、当たったら罰則、触れたらとらない。蹴り技のみスキンタッチが認められる。
- 相手を倒して決めた技は一本となるが、相手が自分から倒れた者に攻撃をした場合には、突きで決まれば有効、蹴りで決まれば中段及び背面は技有り、上段は一本とする。
投げ技
認められる投げ技は、相手を掴まないで行う足払い、と、相手を掴んで(あるいは支えて)行う投げ技である。例えば、出足払いと小内刈りは使用してよいが相手を掴まないで行う必要がある。背負投げや肩車などの肩の上から投げる技や、巴投げ、隅返しなどの捨て身投げなど、旋回軸が腰より上の投げ技は一切禁止である。また掴んで投げる場合には、安全に着地できるように、投げる間相手を支えていなければならない。
次の投げ技は禁止である:
- 相手を離してしまう投げ
- 危険な投げ
- 旋回軸が腰よりも上の投げ
禁止行為
禁止行為は2つに分類され、カテゴリ1とカテゴリ2と称される。これらの懲罰は、忠告、警告、反則注意、反則、失格の5段階にわかれる。基本的に危険な行為を禁止するということは、競技者のそれぞれの勝利の可能性を同等にするということである。言い換えると反則を与えられる状況というのは、相手の反則により競技者の勝利の可能性がゼロになったと審判が判断する、ということである。正当な競技の枠を越えた規則違反はすなわちこれを行うことで相手の勝利の可能性を減らす行為であると審判が判断した場合に与えられるものである。
一度の判断においてカテゴリ1とカテゴリ2の懲罰は同時に与えられることはない。
- カテゴリ1:一般的に負傷につながる行為
- 攻撃部位への過度の接触技
- 喉への接触技
- 腕への攻撃
- 脚部への攻撃
- 股間部への攻撃
- 関節への攻撃
- 足の甲への攻撃
- 貫手による顔面攻撃
- 開手による顔面攻撃
- 負傷の原因となる危険な、又は禁止されている投げ技
- カテゴリ2:
- 負傷を装ったり誇張すること
- 場外へ出る行為(競技者の足または体の一部が競技場外に触れた場合をいう。競技者が相手に押されたり、投げられた場合は除く)
- 自ら負傷を受けやすいような行動をとること
- 自己防衛ができなかった場合(無防備)
逃げること(相手に得点を取られないよう攻撃をしないで)- 相手に攻撃をしかけることなく、相手を掴み投げようとすること又は倒そうとすること
- 掴んだまま、何度も不十分な攻撃を繰り返すこと
- 攻撃技をしかけることなく、単なる不必要な組み合い、レスリング、押し合い、つかみあいをすること(例えば、相手の突きをかいくぐってクリンチすると罰則の対象となる)
- 相手の安全を損なう技
- 危険でコントロールされていない攻撃
- 頭部、肘、膝での攻撃
- 主審の命令に従わないこと
- 相手選手に話しかけること
- 相手選手を刺激するような言動・態度をすること
- 審判団への不作法な態度
- 道徳に反する行為
- ※無防備
- 残心なく、相手から目を離す
- 相手を見ずに突っ込む
- 反撃を防御できないような攻撃をする
有効な攻撃の後、直ぐに顔を背ける(下をむく、審判を見る等)
- 相手を見ずに突っ込む
懲罰の種類
- 忠告
- 初めの軽微な違反に与えられる。
- 警告
- その競技の間に既に忠告が与えられている状況での軽微な違反あるいは、反則注意には値しない違反に対して与えられる。
警告を与えられた競技者の相手には、有効(1ポイント)得点が与えられる。
- 反則注意
- その競技の間に既に警告が与えられている状態後の違反に対して与えられる。
反則には値しない違反に対して直接反則注意が与えられることもある。
反則注意を与えられた競技者の相手には、技有り(2ポイント)得点が与えられる。
- 反則
- その競技の間に既に反則注意が与えられている状態後の違反に対して与えられる。
重大な違反に対しては、それ以前の状態によらず直接反則が与えられる。
反則を与えられた競技者は直ちに反則負けとなり、その相手には、得点差が8ポイントになるように得点が加算される。団体戦の場合には相手に8ポイントを与える処理を行う。
- 失格
- 審判の命令に背いたり、空手道の威信及び名誉を傷つける行為や競技規則に反する行為に対して、正・副審判長によって協議の上決定される。
失格の場合、大会、競技への出場資格を失う。
10セカンドルール
- 10セカンドルール
- 組手選手がノックダウンあるいは投げられ又は自ら倒れて10秒の間に立ち上がれなかった場合は、競技続行が不可能とみなされ、自動的に当該大会期間中、全ての組手競技への出場が不可能となる。
但し、反則行為がなかった(と審判が判断して)のに、倒れて10秒以内に立ち上がれなかった場合は演技とみなされ、失格になる。また10秒以内に立ち上がれなかった選手が無防備であった場合には、当該選手は棄権と判断される。
- ラスト10セカンドルール
- 反撃をせずに絶えず後退し、相手に得点の機会を与えない競技者には忠告あるいは罰則が与えられる。
競技者が試合残り時間10秒未満にこういった行為を行った場合(得点が上なので逃げようとする場合によく見られる)、競技者には警告が与えられ、相手に有効が与えられる。すでにカテゴリ2の違反があれば、その上の罰則が与えられる。
組手競技勝敗判定基準
- 8ポイント差が生じた場合得点の多い競技者
- 時間終了の際に得点の多い競技者
- 相手が失格した場合
- 相手が棄権した場合
個人戦本戦が、同点の場合には、自動的に「引き分け」となりただちに1分間の延長戦が行われる
延長戦
- 延長戦は個人戦にのみ適応される
- 延長戦では、本戦で課せられた全ての罰則および忠告が持ち越される
- 初めに得点した選手が勝者となる
- 同点の場合でも、審判判断により勝者が決定される
同点の際の判定基準
- 態度
- 闘争心
- 力強さ
- 戦略の優劣
- 技術の優劣
- しかけた技の多さ
団体戦
団体戦で以下の場合には勝負が確定し、競技終了となる:
- 3対0
- 3対1
- 2対0 2引き分け
- 2対1 1引き分け
- 総合取得ポイントで9ポイント以上差が発生した場合
団体戦では延長戦は行わない。
棄権
- 競技者が競技場で名前を呼び出された際にその場にいることができず競技継続を放棄した場合。
- 主審の命令により競技から退場した場合(負傷した場合も含む)。
負傷
- 競技者が負傷した場合には、競技はただちに中断されてドクターによる診断、負傷手当が行われる。
- 手当の時間は3分間とし、それ以上の時間を要する場合、及び競技継続の妥当性などは主審によって判断される。
- 負傷した競技者が大会ドクターにより競技出場が不適当と判断された場合競技の続行はできない。
- 相手の反則により勝者となった場合の負傷競技者は、再度の相手の相手の反則により勝者になった場合次の競技には参加できない。
- 倒されたり、投げられたりあるいはノックダウンさせられ10秒以内に立ち上がれなかった競技者は以後の競技には参加できない。
異議申し立て
- 判定については誰も審判員に異議申し立てすることはできない。
- 競技運営に関して欠陥があった場合には、その場でコート主任に報告することができる。
- 審判員の手続きが規定違反と思われる場合には、当該行為が発生した競技の直後に書面にて正式な代表者のみが行うことができる(詳細は競技規定を参照のこと)。
競技者の服装
- 白で無印の空手着を着用する。
- 競技者の一人は赤帯、もう一人は青帯を着用しなければならない。
- 帯の幅は約5cmで長さは結び目の両端の余りが15cm程十分に残る長さ。
- 上着の長さは、帯をしめた状態で腰をおおう程度とし、大腿の3/4までとする。
- 女子の場合は空手着の下に白無地のTシャツを着用しても可。
- 上着の袖の長さは手首までで、前腕の中程より短くてはならない。
- 上着の袖をまくってはいけない。
- ズボンの長さは下肢の2/3をおおう程度。
- ズボンの長さは踝が隠れてはいけない。
- ズボンの裾はまくりあげてはいけない。
- 鉢巻きは禁止。
- 組手競技ではヘアクリップ、金属のヘアピンは禁止。
- 形競技では目立たないヘアクリップの使用可。
- 形競技ではリボンその他の装飾は禁止。
- 金属を身につけてはならない。
- 金属歯列矯正器を使う場合には、主審及び公認医師の許可が必要である。
用具など
- JKFは赤・青のサポーターを使用する。
- マウスピース、セイフティーカップを使用しなければならない。
- すね、足の甲への堅いプロテクターは禁止。
- 眼鏡の使用は禁止。
- ソフトコンタクトレンズは競技者自身の責任において使用可。
- 負傷による包帯、バンディング、又はサポーターの使用は主審の許可が必要。
- 主審が競技者の髪が長すぎる、あるいは、不清潔であるとみなせば失格になる。
- 負傷に関する責任は、すべて競技者が負う。