組手競技における記録係の仕事
概要/運営上の注意/記録用紙への記録方法/特記事項
概要
組手競技において記録係のおこなうべき仕事は主に以下の4つである。
選手呼出
- 各競技の開始前に、エントリされている選手を確認する
- 試合毎に選手を呼び出す
計時
- 試合開始から試合終了までをストップウオッチ等で計測する
- 試合の進行が停止している場合には、計時を中断し、試合再開時には計時を続行する
- 試合終了前30秒の時点で、ベルを短く3回鳴らしこれを知らせる
- 試合終了時には、ベルを長く1回鳴らしこれを知らせる
- 10セカンドルールで必要な10秒のカウントも必要に応じて実施する
- 時間の計測は正確に行わなければならない
得点表示
- 主審の宣告結果に基づき、赤・青の得点(ポイント数)、反則(カテゴリ1・2別)の表示を行う
試合経過記録
- 試合経過記録は、主審の宣告結果に基づき、技、反則、試合結果などを発生順に記録する
運営上の注意
記録係の作業は、正しい競技進行の規定や主審・副審の動作の意味を理解しておいて始めて可能になるものである。従って、競技規約を事前に正確に理解しておくことが重要である。
また、適宜休憩をとる、あるいは係を交替するなどの工夫を行わうこと。長時間連続して作業を行うと間違う可能性が高くなるので注意する。
記録は、競技そのものを記録する重要な作業なので失敗のないような運営が求められる
また、大会によっては運営上の制約により運営方法に申し合わせ事項等がある場合もあり得るので、競技開始前には必ずコート主任あるいは主審などと確認作業をする必要がある。
また、円滑な連絡などのために、記録係のなかで連絡窓口となる人物を選定しておく事が望ましい。
以下に、参考のため具体的な記録作業の一例を示す
選手呼出(例)
準備作業:
- トーナメント表を元に、試合順(注意:選手ゼッケン順ではない)を確認する
- 一般的には1回戦および2回戦までを確認すればすべての選手を網羅できる
- 試合順に、かつゼッケンの若い番号から選手の点呼を開始する
「第1試合」「ゼッケンA番、xxxx選手」(返事)「赤」(返事)、「ゼッケンB番、yyyy選手」(返事)「青」(返事)
- トーナメントで組み合わされた選手の内、番号が若い方が赤になるので、注意する
- ゼッケン順に呼ばない理由は、赤と青の関係を間違えることを避けるためである
試合開始時:
- それぞれの試合開始準備は当該対戦の選手をそれぞれ「赤 xxxx選手」、「青 yyyy選手」と呼び出す
試合終了時:
- 試合は一回戦(トーナメント表で同列にあるもの)終了毎に赤、青の所定位置が変更になる可能性があるので、必ず点呼、位置割り当て(赤、青の別)を選手に対して行う
- 一回戦終了後、審判・選手が整列し終了の挨拶が行われるので、その後すみやかに選手をコート中央に集め、赤・青の割り当てを行う
- 割り当てが終了したら、主審に対して次の回戦の準備が完了した旨をつげる
計時の具体的方法(例)
準備作業:
- 計時用の道具は試合会場毎に異なるので、競技開始前にスタート、停止、継続、リセットの操作を確認しておく
- ベルなどの道具の操作方法、音量の程度も確認しておく
試合開始:
- 試合開始前にリセットしておく
- 主審の宣言により試合が開始されると同時に計測を開始する
試合中:
- 主審の宣告により計時を一次停止する必要がある場合には、速やかに一次計測を中断する
- 計測の再開の指示により速やかに計測を再開する
- ここで、計測中と中断の差がわかるように、計時を中断停止している間ストップウオッチを上に掲げる、あるいは文字盤の面を正面に向け停止していることを見せる身ぶりをする場合もある
試合終了30秒前:
- ベルを短く3回鳴らすと同時に、「30秒前です」と主審に告げる
試合終了時:
- ベルを長く1回鳴らすと同時に、「時間です」と主審に告げる
- 主審が試合の終了を宣告したことを確認し、計測を停止し、次の試合の準備作業を開始する
得点表示の具体的方法(例)
準備作業:
- 得点表示装置の操作を確認する
- ポイント数字の不備や漏れなどのないことを確認する
- 赤、青の得点表示装置(試合によって表示装置は異なる)のそれぞれに担当者を設置することが望ましい
試合開始時:
- 各試合開始直前に、得点表示がすべてクリアーされていることを確認する
試合中:
- 主審の宣言により赤、ないし、青の選手に対しての技、罰則などが確定したらすみやかにこれを表示する(取り消す場合もあるので注意が必要である)
- 主審の宣告が確定する前に表示をしてはならない
延長戦開始前:
- 本戦の勝敗の結果が引き分けになった場合、懲罰の表示を残して、技のポイント表示をゼロにして試合を開始する
試合終了時:
- 主審の宣告により試合の勝敗が確定し、試合が終了した後、速やかに得点表示をすべてスタート時点に戻す
- この際、最終的なポイント数、懲罰内容に関して試合経過記録係に伝え、相互確認を行う
試合経過記録の具体的方法(例)
準備作業:
- トーナメント表と記録用紙を準備する
- 各競技の開始に先立ち、エントリされている選手とゼッケンを選手呼出係に確認する
- 基本的には、トーナメント表への誤植やエントリ状況、事前に試合棄権が分かっているかどうかなどの、情報確認を行う
- 記録用紙に、試合の名称(種目名、一回戦、二回戦の区別など)を記入する
試合開始時:
- 選手が呼び出されたら、対応する選手名、ゼッケン番号、を手元の資料で確認し、記録用紙の対戦者番号、対戦者名に記入する
試合中:
- 主審の宣告により選手に技ポイントあるいは懲罰が与えられたらこれを記録用紙に記入する
試合終了時:
- 得点表示のポイントとの相互確認を行う
記録用紙への記入方法
記録をするのは、以下の項目である:
- 試合中:
- 技、ポイント、反則
- 試合後:
- 総ポイント数、判定結果
個人組手競技記録用紙
略記号
これは、技の部位と種類を記録する。複合技の場合には前の名前を記載する
- 上段
- 突き:上ツ
- 打ち:上ウ
- 蹴り:上ケ
- 突き:上ツ
- 中段
- 突き:中ツ
- 打ち:中ウ
- 蹴り:中ケ
- 突き:中ツ
マーク
得点、反則種を記録する
- 得点:
- 1ポイント:○
- 2ポイント:●
- 3ポイント:○●
- 1ポイント:○
- 反則:
- カテゴリ1
- 忠告:C1W
- 警告:C1K
- 反則注意:C1HC
- 反則:C1H
- 忠告:C1W
- カテゴリ2
- 忠告:C2W
- 警告:C2K
- 反則注意:C2HC
- 反則:C2H
- 忠告:C2W
- カテゴリ1
順番
- 行為の順番を示す。1から順番に記載する
- 相手選手の反則によりポイントを得た場合には、双方に同じ数字を記載する
得点
得点したポイント数を数字で記載する
結果マーク
勝敗の結果を勝ち(□)、負け(×)、引き分け(△)で記載する
- 棄権の場合にはKK
- 失格の場合にはS
実際の記入例:
基本的な記入場所の説明は以下のようになっている。
用紙によって欄の位置など異なる場合があるので注意すること。
記入事例を3通り紹介する。
一般的な試合進行の場合
反則があった場合
延長戦があった場合
特記事項
成人や高校生などの試合では考えにくいが、幼児や小学生での試合には選手の取り扱いに注意が必要である。
例えば以下のような事が起こることがある:
- 自分の名前を呼ばれても反応することができない
- →選手を振り分ける場合、特に幼年は、最初座らせておいて名前を呼ばれた者を立たせてこれを一人ずつ誘導する方が効率的である
→自分の名前ではないのに、反応して競技場にでてくる場合がある。同時に二人でてくる場合もある。反応がおかしいと感じた場合には、当該選手のところに行き、名前を再度確認したり、帯名を確認したりする方がよい
- 自分の名前を呼ばれても反応することができない
- 赤や青の用語を理解することができない。このため、所定と反対の場所で試合開始を待っていることがある
- →所定の位置を指示する場合、赤と青の位置に係員を配置して実際にその人間に選手を渡すと間違いが少ない
- 赤や青の用語を理解することができない。このため、所定と反対の場所で試合開始を待っていることがある